ヒッカ@エレのくだらない何か

ヒッカ@エレが小説とか色々置く場所です

全てを科学的に

「世界の全てが合理的で、科学的に証明出来るものでないとならないなど誰が決めた?」

 

私は、彼の問いに答える事が出来なかった。

その姿は、私がよく知るいつもの彼とはかけ離れていて。

「いつかプリパラのシステムを科学的に証明してやる」なんて、いつも張り切って調査していたのに。

 

「解らないか?そうだろうな。」

「誰が・・・そう決めたの?」

「俺だ。」

 

彼は笑って、そう答えた。

 

「だから・・・君の存在も科学的に証明してやらないと駄目なんだよ。」

「それが、本性?」

「ははっ、どうだろうな?」

 

確かに、彼はチームメイトの事をよく知っていたけれど。

まさか、私の‘真実’まで知っているとは思わなかった。

 

「死んだ人間がプリパラにボーカルドールとして転生する・・・実に興味深いじゃないか。これにはプリパラのシステムも大きく関わってくるのだろう。全て、解明してやる。それまで待っていてはくれないか、リラ?」

「・・・いいよ、ベリリア。貴方に出来るとは思えないけれど」

 

彼は、はは、と乾いた笑いを浮かべた。

天涯孤独の少女を救ったお話。 後編

「それで、その後どうなったの?」

「まあ、普通かな。遺体の回収して、何とか葬式して、家を用意して、1週間ごとに仕送りして・・・今は秋ちゃんも、普通の生活してるよ。」

「普通・・・なのかな?」

「普通なんだよ。少なくとも、両親を失ったあの子にとっては」

「それは、それで・・・何だか、悲しいね」

「そう?」

「私は、そう思うよ。ま、いっか。それより、そろそろ閉園の時間だね・・・お話聞かせてくれて有難う。また何かあったら聞きたいな。」

「ああ、そっか。そろそろ帰らないと。・・・ねえ」

「どうしたの?そーし」

「リラは、さ。寂しくないの?夜に1人で。

「ああ・・・いや、別に。大して寂しくもないよ。だって、私は・・・いや、何でもない。」

「・・・そっか。じゃあ、俺は帰るね。また明日」

「うん、また明日。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は、眠り方を知っているの。」

幕間

ヴィオラ

「はいはい!どうしたの、ミヤちゃん?」

「新しく入った1年生の子の事で少し話があるんだけど、いいかな?」

「いいよ!」

 

詩乃薔薇中学校の吹奏楽部は、今日もいつも通りに活動していた。

そんな中、BASSパートに所属している2年生の彼女・・・

蒼月ミヤは、最近入部したとある1年生を気に掛けていた。

別に彼女の直属の後輩という訳ではない。

だが、ミヤは恐らく、この部活で1番その後輩の事を怪しんでいた。

そして最終的に、同じ2年生で最も信頼のおける友人であるヴィオラ・カルデローネに相談する事にした。

一応イタリア人だが、日本生まれ日本育ちの上何でか黒髪なのでほぼほぼ日本人と変わらない。

また学校では偽名を使っている為(勿論学校の許可は得ている)、他の部員達は全員彼女が日本人だと思っている。

因みに偽名を使っているのはミヤも同じである。

ミヤもヴィオラも仕事の立場上、正体がバレる訳にはいかないのだ。

そんなヴィオラはミヤが怪しんでいる後輩の直属の先輩である。

 

そんな訳で人目の付かない場所に移動した2人。

 

「それで、新しく入った1年生の子って誰?」

「君の直属の後輩・・・ノア、だっけ。」

「ああ、あの子ね。あの子がどうしたの?」

「いや、何か・・・簡単に言うと、あの子はこの世界の人間ではない気がするんだ。」

 

ミヤがそう言うと、ヴィオラは驚きの表情を見せた。

当然だろう、自分にやっと後輩が出来て喜んでいたところにその後輩が異世界人であるかもしれないなんて言われたら誰でも驚く。

 

「まだ確定はしていないんだけどね・・・何となく、解るんだよ。あの子の纏っている‘気’は・・・この世界の物ではないって。」

「・・・ミヤちゃんが言うなら、そうなのかな。」

「ただ、もう少し調査を続けた方がいいと思うんだ。もしかしたらちゃんとしたこの世界の住人かもしれないし」

「解った。こっちでも調べてみるよ。」

 

2人はお互いに頷き合うと、部室に戻った。

 

 

「っくしゅん!」

「どうしたの、ノアちゃん?」

「いや、誰かに噂されてるような気がするんだ。不確定だけど・・・」

「へ~・・・」

「ところで、ユラ。」

「はい?」

「ユラって、小学校の時から凄い情報収集能力を持ってたでしょ?」

「え?うん、皆からはそれで頼りにされてたけど・・・それがどうしたの?」

「部活終わったら、話したい事があるんだ。時間ある?」

「うん、あるよ。」

「・・・ならいいの。」

 

ノア・リッジウェイは、妖しげに笑った。

天涯孤独の少女を救ったお話。 前編

颯司side

 

これは、俺がまだ中学1年生だった頃の話。

 

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「颯司、迎えが来てるよ」

「はい」

 

ああ、コンクール、楽しかった。

まさかこんなに遅くなるとは思わなかったけど。

1年生なのにコンクールに出させてもらえるとも、思ってなかった。

先生は迎えが来てるって言ってたけど・・・

誰が来てるんだろう?

 

 

in学校の駐車場

 

「やっと来たわね。遅いわよ、颯司」

「ね、姉様・・・!?」

「何をそんなに驚いているのかしら。」

「い、いや、だって・・・!」

 

いつもあんなに派手な姉様が、凄く・・・

地味!

いつもくるっくるなロングヘアーはストレートになってるし、服装もドレスじゃないし扇も持ってないし・・・

 

「全く、話は後で聞くわ。車を来させているから早く乗りなさいな。」

「あ、車あるんだ・・・」

「当然でしょう?私がこんな田舎まで護衛も無しにバスや電車で来るとでも?」

「うっ・・・」

 

それを言われたら何も言い返せないから困るんだけど・・・

まあいいや、車乗っちゃおう。

誰も・・・

居ないね。

ならウィッグとカラコンも取れるかな。

 

 

-帰宅中-

in車内

 

取り敢えず荷物を置いて、ウィッグとカラコンを外す。

すると姉様が話し掛けてきた。

 

「それで?さっきは何故あんなに驚いていたの?」

「いや、だって・・・姉様いつも詩乃薔薇の事を田舎だなんだって言って嫌ってるから、まさか迎えに来るなんて思わなくて」

「私だって、貴方がコンクールメンバーでなかったら執事に任せて家に居たわ。」

 

姉様は俺とは全然違う黒い髪を弄りながらそう言った。

・・・ん?

って事は

 

「俺がコンクールメンバーだからってわざわざこんな処まで!?」

「少し驚いた位で大きな声を上げないでちょうだい、はしたない。」

「あっごっ御免」

「・・・はぁ。ええ、そうよ。今年入部したばかりにも関わらずコンクールメンバーに選ばれるなんてとても名誉な事だもの。ふふっ」

 

姉様、こんな優しく笑えるんだ・・・

そういえば、見に来るって言ってたな。

何処に居たんだろう。

 

「顧問の先生から聞いたわ。銅賞だったんですってね。」

「・・・うん」

「落ち込む事は無いわ。最前列で聴いていたけれど、貴方のチューバはとても良い音だったわよ。他の部員の実力が貴方に追いついていなかっただけ。来年、他の部員達を鍛え直して、今度は金賞を取りなさいな。」

「姉様・・・有難う。というか最前列で聴いてたんだね・・・全然解らなかった」

 

 

俺がそう言うと同時に、車が止まる。

信号が赤になったらしい。

 

「ああ、いつもの私と全く違うから気付かなかったのでしょうね・・・あら?」

「ん?どうしたの?」

「・・・」

「ちょ、ちょっと、姉様?何で窓の外なんて見て・・・ねぇ・・・」

 

駄目だ、全く返事してくれない。

窓の外に何があるっていうの?

というかもう車走り出しちゃったけど・・・

 

「ちょっと、姉様・・・」

「・・・車。1回止めてちょうだい」

「は、しかし・・・」

「いいから止めなさい!」

 

わっ、また揺れた。

ていうか何?

取り敢えず姉様についていけば解るかな・・・

というか此処って・・・公園?

 

 

in公園

 

「姉様、何・・・あっ」

 

あれ、女の子かな。

こんな遅くに1人で・・・

泣いてる?

 

「少しいいかしら。」

「・・・誰?」

「私は珠洲河 颯姫。小さな女の子が1人で居たものだから、つい気になって来てしまったの。それで、こっちが私の弟の颯司よ。」

「・・・そうなんだ。」

「それで、貴方はどうしてこんな処に居たの?もう遅いのだから、早く帰らないとご両親も心配するわよ?」

「・・・居ないの」

「え?」

 

親が居ない?

どういう事?

 

「さっき、さっきね、お母さん、お父さんと手繋いで、2階の、2階のベランダから、うぅ・・・!」

 

・・・は?

 

「心、中・・・?」

「義務教育すら終わっていない子供を残して心中だなんて・・・親戚の方とかはいらっしゃらないの?」

「居ない・・・」

「・・・そう。」

「姉様、この子どうするの?流石に此処に置いていく訳にもいかないよね?」

「家に招き入れましょう。それと、1つ訊いていいかしら。」

「何?」

「貴方にじゃないわよ・・・そこの、あー、名前はなんて言うの?」

「秋、秋雲、ユラ・・・」

 

ユラ・・・ね。

 

「どうして貴方はこんな事も出来ないの!貴方なんか産まなければ良かった!」

 

「っ・・・!」

「あー・・・秋、と呼びましょうか。それで、秋。貴方の御両親が飛び降りたのはさっき、だと言ったわよね?」

「うん・・・」

「なら遺体が残っている筈だわ。それだけ回収しに行きましょう」

 

死体の回収って・・・

 

「まさか秋ちゃん連れて、とか言わないよね?」

「・・・本当なら、連れていった方が良いのでしょうけど。車で待っていてもらいましょうか。秋、貴方の家は何処?」

「・・・あっちの方」

「解ったわ。取り敢えず車に乗ってもらえるかしら。貴方の家まで行くわ」

「了解。」

 

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こうして俺達は、ユラちゃんの家まで向かった。

メアリィ・スー

幻想郷の住人達は今日も楽しく過ごしていました!

それは何故かって?

幻想郷の創造神の1人、黄泉月リィが居るからです!

 

黄泉月リィは全てを操る力を持っていました!

彼女は幻想郷で起こったどんな異変も1人ですぐに解決してみせました。

彼女に弾幕勝負で敵う者は誰1人居ませんでした。

楽園の素敵な巫女も、境界の妖怪も、彼女の強さの前には無力でした。

 

ある日、黄泉月リィは言いました。

 

「あーあ、この世界にも飽きてきちゃった。」

 

彼女は自分が、本来ならこの世界に居るべきではない存在・・・

メアリー・スーだという事を理解していました。

けれど彼女はこの世界を楽しんでいました!

しかし、それも長くは続きませんでした。

 

黄泉月リィはこの世界を離れ、別の世界へ行く事を決めました。

 

「さーて、次は何処に行こうかなー?」

 

全てを操る彼女は、別の世界の様子を見る事も容易でした。

そして彼女は、とある世界を見ると同時にぱあっと目を輝かせました。

遂に自分が次に行きたい世界を見つけたのです!

 

「此処だ、此処にしよう!」

 

彼女は早速能力を使い、その世界に行きました。

その世界できっと、彼女は‘目’の能力を手に入れるのでしょう。

創造神は幻想郷から居なくなりました。

彼女は最後に、自らが元々持っていた力でこの世界に魔法をかけました。

 

普通の魔法使いも、永遠と須臾の罪人も、かつての創造神の事を忘れ去りました。

 

濃霧の吸血鬼はふと思いました。

「あの時私が起こした異変は誰が解決したんだったかしら?」

空想上の人格保持者は無意識に言いました。

「大人の人で、私を見つけてくれた人が居た気がする。誰だっけ?」

 

その疑問は、これからも永遠に解消される事は無いのでしょう。

黄泉月リィが、創造神としてこの世界に戻ってこない限り。

 

 

 

黄泉月リィが、かつて存在していた世界で。

 

1人だけ、彼女の事を覚えている女の子が居ました。

 

「・・・リィ。何処に、居るの?」

 

彼女は、黄泉月リィの姉でした。

 

そーしと颯司

リラの一件から暫く経ち、ベリリウムイットリウムぱにょそーしリラの5人でチームを組む事が決定した。

今日、5人はその事で遅くまで打ち合わせをしており、打ち合わせが終わる頃にはプリパラの閉園時間は既に1時間程過ぎていた。

 

「あ~、やっと終わった~!」

「って、もうこんな時間!?マズい、もう帰らないと・・・!お疲れ!お先に失礼!」

「ちょっと、そーし・・・行っちゃった」

「随分と焦っていたようだが・・・何かあるのか?」

「さあ?そういえば私達、そーしの家の事とか何も知らない気がするにゃ。」

「あ、確かに・・・ぱにょさんの家には何回か押し掛けるけど、そーしの家に押し掛けた事はまだ無いね。」

「押し掛け・・・?」

「ああ・・・気にしないでいいにゃ。」

「おっと・・・余り遅くなると色々な意味で危険だから、俺達はこれで帰らせていただく。」

「あ、じゃあ私も帰るにゃ。」

「じゃあリラさん、また明日!」

「ええ、また明日。」

 

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一方その頃、プリパラを出たそーし・・・

いや、颯司は、出せる限りの全速力で横浜の街を走っていた。

その髪はプリパラの中とはまるで違う白色をしていて、目も赤く輝いている。

・・・先天性白皮症。

それが、颯司が産まれ付き患っている病気の名前。

 

つ、着いたぁ・・・」

 

颯司はとある豪邸の前で立ち止まると、そう呟いた。

走っている内に少し位置のズレた眼鏡を元の位置に戻し、門を潜る。

 

「お帰りなさいませ、颯司様」

 

そう言う門番に適当に「ああ」と返しつつ、豪邸の中に入る。

中には複数の執事やメイドが待機していて、颯司を見るなり

 

「お帰りなさいませ、颯司様」

 

と口を揃えて言った。

・・・颯司は、とある財閥の御曹司である。

跡取りではないのだが。

 

「ただいま」

 

そう言って自分の部屋へ向かおうとしたその時、突然声をかけられる。

 

「今日は随分遅かったのね、颯司」

 

颯司が顔を上げると、彼の目の前には黒髪のロングヘアをハーフアップにした黒目の女性が立っていた。

彼女は青色のドレスを着て、青い扇で口元を隠している。

 

「姉様・・・てっきりもう自分の部屋に戻っている頃だと」

「あら、目の前に居たのに気が付かなかったの?」

「ああ、全く。」

「そう・・・」

 

颯司が「姉様」と呼んだ人物は少し悲しげに目を伏せると、またすぐに颯司に向き直った。

 

「それにしても、こんなに遅くまで一体何処をほっつき歩いていたのかしら。部活から帰ってきたと思ったら、昼食を食べてすぐに出ていってしまうんだもの。」

「・・・もしかして、何か話す事とかあった?それなら御免。大事な用事があったから」

「へぇ。それで?結局何処に行っていたの?」

「・・・それは、えっと」

 

颯司は少し考え、こう言った。

 

「みなとみらいの方に。」

「ああ、そう。勉強はきちんとしているんでしょうね?」

「まぁ、一応。」

「一応ですって?」

 

彼女はそう言うと扇を閉じ、颯司を睨み付けた。

 

「貴方、自分が珠洲河家の長男だという自覚があるのかしら?跡取りでないとはいえ、この家に生まれた以上勉強はしっかりしてもらわないといけないの。お父様とお母様に叱られるのは私なのよ?」

 

彼女は後ろを向き、奥の階段の方へ歩いていく。

 

「それにしても、勉強を放ったらかしにするなんて・・・余程大事な用事なんでしょうね。私には解らないけれど。」

 

彼女はそれ以降1度も言葉を発する事なく、階段を上がっていった。

 

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少し時間は経ち、颯司は自分の部屋で1人考え込んでいた。

 

「・・・異世界に行ってるなんて、言える訳ないじゃん。」

 

そう。

此処は横浜。

ヨコパマではないのだ。

まあ何が言いたいかというと、今颯司の居る此処は、簡単に言ってしまえば異世界である。

颯司は自身の後輩の導きにより、異世界に存在するプリパラに辿り着き・・・

それ以降、時間がある時にはプリパラに行っている。

といってもそんな話は現実味が無さ過ぎるので、結局誰にも言えないのだ。

 

「・・・明日、楽しみだなぁ。」

 

今日は10月20日。

明日は10月21日。

颯司の誕生日である。

 

「ふふ、これが初のチームライブか。」

 

颯司はアイドルウォッチを取り出すと、とある曲を再生した。

明日、彼のバースデーライブが企画されているのだ。

 

「まあ、今日はもう寝よう。寝不足でライブ出られないなんて笑い事にもならないからね。」

 

颯司はベッドに横になると、そのまま眠りに落ちた。

彼女は確かに存在していた

そーしside

 

彼女は少しして落ち着く(少なくとも俺にはそんな風に見えた)と、呆れたような表情で言った。

 

「プリパラに用があるんだね。もう寝ちゃってるけど、さ。」

「ぱにょ。・・・なんて言ってる?」

「えっと・・・「プリパラに用があるんだね。もう寝てるけど」って言ってるにゃ」

 

ぱにょがそう言うと、彼女はまた目を見開く。

 

「・・・え?」

「お~、解りやすく動揺してる。」

「えっと・・・取り敢えず、私が彼女がなんて言ってるか言うから、彼女が今どういう様子か教えてほしいにゃ。」

「解った。取り敢えず俺が話し掛けてみる。」

「ちょっと待って、どういう・・・」

「えっと・・・なんて呼べばいいのかな。取り敢えず・・・」

 

俺は彼女に近付くと、彼女の手を取・・・

ろうとした。

でも物理的にもその体は透けているらしくて、俺の手は空を切った。

 

「触れない、か・・・」

「貴方もしかして・・・私の事、視えてるの?」

「えっと・・・「私の事視えてるの?」って言ってるにゃ」

「バッチリ視えてるよ、声は聞こえてないけど。聞こえてたら此奴呼んでないし」

「・・・もしかして、私に用があるの?」

「私に用があるのか、だって」

「うん。単刀直入に言うと、俺達は今5人チームを結成しようとしてるんだ。でも最後の1人が中々見つからなくて・・・君に入ってほしい。そっちのボーカルドールじゃなくて、君に。」

「私に・・・?でも、私の体は恐らく誰にも確認されてない。システムでさえも・・・どうやって私を実体化させるつもり?」

「・・・「システムでさえも自分の存在を確認出来てないのに、どうやって私を実体化させるつもり?」」

「簡単だよ。君に関する、強い願いがあればいいんだ。君、本当は自分の存在を皆に認知してほしいって思ってるでしょ?」

「・・・思ってる。思ってるに決まってるでしょ、そんなの!私はリラだ!決してこんな何の苦労も知らないようなボーカルドールじゃない!」

「そう思ってる、みたいだにゃ。」

「ふふ、でしょ?そうだと思ってたんだ。そして俺は、君みたいなアイドルを必要としている。君みたいに、中に大きな闇を抱えたアイドルをね。ねえ、心の中で強く願ってみて。「私はまだ、此処に存在していたい」ってさ。」

 

彼女は少し迷ったような素振りを見せた後、口を開いた。

いや、俺には何言ってるのか解らないんだけどさ。

 

「貴方の言う通りにすれば、私はリラとして存在出来るの?」

「「貴方の言う通りにすれば私は存在出来るの?」」

「当然。」

 

彼女は少し動きを止めた後、覚悟を決めた、とでも言うかのように胸に手を当てた。

 

「解った。私は・・・私は・・・」

 

彼女は少し俯き、その後叫ぶかのように顔を上げる。

 

「私はまだ此処に存在していたい!」

 

その声は、俺にもよく聞こえた。

透き通った、綺麗な声だった。

 

「・・・!私、本当に・・・!」

「ふふ、ね?俺の言う通りにして良かったでしょ?」

「有難う。えっと・・・私はリラ。黄泉月リラ。」

「颯司だよ。改めて・・・ようこそ、俺のチームへ。リラ、これから宜しくね。」