そーしと颯司
リラの一件から暫く経ち、ベリリウム、イットリウム、ぱにょ、そーし、リラの5人でチームを組む事が決定した。
今日、5人はその事で遅くまで打ち合わせをしており、打ち合わせが終わる頃にはプリパラの閉園時間は既に1時間程過ぎていた。
「あ~、やっと終わった~!」
「って、もうこんな時間!?マズい、もう帰らないと・・・!お疲れ!お先に失礼!」
「ちょっと、そーし・・・行っちゃった」
「随分と焦っていたようだが・・・何かあるのか?」
「さあ?そういえば私達、そーしの家の事とか何も知らない気がするにゃ。」
「あ、確かに・・・ぱにょさんの家には何回か押し掛けるけど、そーしの家に押し掛けた事はまだ無いね。」
「押し掛け・・・?」
「ああ・・・気にしないでいいにゃ。」
「おっと・・・余り遅くなると色々な意味で危険だから、俺達はこれで帰らせていただく。」
「あ、じゃあ私も帰るにゃ。」
「じゃあリラさん、また明日!」
「ええ、また明日。」
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一方その頃、プリパラを出たそーし・・・
いや、颯司は、出せる限りの全速力で横浜の街を走っていた。
その髪はプリパラの中とはまるで違う白色をしていて、目も赤く輝いている。
・・・先天性白皮症。
それが、颯司が産まれ付き患っている病気の名前。
「つ、着いたぁ・・・」
颯司はとある豪邸の前で立ち止まると、そう呟いた。
走っている内に少し位置のズレた眼鏡を元の位置に戻し、門を潜る。
「お帰りなさいませ、颯司様」
そう言う門番に適当に「ああ」と返しつつ、豪邸の中に入る。
中には複数の執事やメイドが待機していて、颯司を見るなり
「お帰りなさいませ、颯司様」
と口を揃えて言った。
・・・颯司は、とある財閥の御曹司である。
跡取りではないのだが。
「ただいま」
そう言って自分の部屋へ向かおうとしたその時、突然声をかけられる。
「今日は随分遅かったのね、颯司」
颯司が顔を上げると、彼の目の前には黒髪のロングヘアをハーフアップにした黒目の女性が立っていた。
彼女は青色のドレスを着て、青い扇で口元を隠している。
「姉様・・・てっきりもう自分の部屋に戻っている頃だと」
「あら、目の前に居たのに気が付かなかったの?」
「ああ、全く。」
「そう・・・」
颯司が「姉様」と呼んだ人物は少し悲しげに目を伏せると、またすぐに颯司に向き直った。
「それにしても、こんなに遅くまで一体何処をほっつき歩いていたのかしら。部活から帰ってきたと思ったら、昼食を食べてすぐに出ていってしまうんだもの。」
「・・・もしかして、何か話す事とかあった?それなら御免。大事な用事があったから」
「へぇ。それで?結局何処に行っていたの?」
「・・・それは、えっと」
颯司は少し考え、こう言った。
「みなとみらいの方に。」
「ああ、そう。勉強はきちんとしているんでしょうね?」
「まぁ、一応。」
「一応ですって?」
彼女はそう言うと扇を閉じ、颯司を睨み付けた。
「貴方、自分が珠洲河家の長男だという自覚があるのかしら?跡取りでないとはいえ、この家に生まれた以上勉強はしっかりしてもらわないといけないの。お父様とお母様に叱られるのは私なのよ?」
彼女は後ろを向き、奥の階段の方へ歩いていく。
「それにしても、勉強を放ったらかしにするなんて・・・余程大事な用事なんでしょうね。私には解らないけれど。」
彼女はそれ以降1度も言葉を発する事なく、階段を上がっていった。
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少し時間は経ち、颯司は自分の部屋で1人考え込んでいた。
「・・・異世界に行ってるなんて、言える訳ないじゃん。」
そう。
此処は横浜。
ヨコパマではないのだ。
まあ何が言いたいかというと、今颯司の居る此処は、簡単に言ってしまえば異世界である。
颯司は自身の後輩の導きにより、異世界に存在するプリパラに辿り着き・・・
それ以降、時間がある時にはプリパラに行っている。
といってもそんな話は現実味が無さ過ぎるので、結局誰にも言えないのだ。
「・・・明日、楽しみだなぁ。」
今日は10月20日。
明日は10月21日。
颯司の誕生日である。
「ふふ、これが初のチームライブか。」
颯司はアイドルウォッチを取り出すと、とある曲を再生した。
明日、彼のバースデーライブが企画されているのだ。
「まあ、今日はもう寝よう。寝不足でライブ出られないなんて笑い事にもならないからね。」
颯司はベッドに横になると、そのまま眠りに落ちた。