彼女は確かに存在していた
そーしside
彼女は少しして落ち着く(少なくとも俺にはそんな風に見えた)と、呆れたような表情で言った。
「プリパラに用があるんだね。もう寝ちゃってるけど、さ。」
「ぱにょ。・・・なんて言ってる?」
「えっと・・・「プリパラに用があるんだね。もう寝てるけど」って言ってるにゃ」
ぱにょがそう言うと、彼女はまた目を見開く。
「・・・え?」
「お~、解りやすく動揺してる。」
「えっと・・・取り敢えず、私が彼女がなんて言ってるか言うから、彼女が今どういう様子か教えてほしいにゃ。」
「解った。取り敢えず俺が話し掛けてみる。」
「ちょっと待って、どういう・・・」
「えっと・・・なんて呼べばいいのかな。取り敢えず・・・」
俺は彼女に近付くと、彼女の手を取・・・
ろうとした。
でも物理的にもその体は透けているらしくて、俺の手は空を切った。
「触れない、か・・・」
「貴方もしかして・・・私の事、視えてるの?」
「えっと・・・「私の事視えてるの?」って言ってるにゃ」
「バッチリ視えてるよ、声は聞こえてないけど。聞こえてたら此奴呼んでないし」
「・・・もしかして、私に用があるの?」
「私に用があるのか、だって」
「うん。単刀直入に言うと、俺達は今5人チームを結成しようとしてるんだ。でも最後の1人が中々見つからなくて・・・君に入ってほしい。そっちのボーカルドールじゃなくて、君に。」
「私に・・・?でも、私の体は恐らく誰にも確認されてない。システムでさえも・・・どうやって私を実体化させるつもり?」
「・・・「システムでさえも自分の存在を確認出来てないのに、どうやって私を実体化させるつもり?」」
「簡単だよ。君に関する、強い願いがあればいいんだ。君、本当は自分の存在を皆に認知してほしいって思ってるでしょ?」
「・・・思ってる。思ってるに決まってるでしょ、そんなの!私はリラだ!決してこんな何の苦労も知らないようなボーカルドールじゃない!」
「そう思ってる、みたいだにゃ。」
「ふふ、でしょ?そうだと思ってたんだ。そして俺は、君みたいなアイドルを必要としている。君みたいに、中に大きな闇を抱えたアイドルをね。ねえ、心の中で強く願ってみて。「私はまだ、此処に存在していたい」ってさ。」
彼女は少し迷ったような素振りを見せた後、口を開いた。
いや、俺には何言ってるのか解らないんだけどさ。
「貴方の言う通りにすれば、私はリラとして存在出来るの?」
「「貴方の言う通りにすれば私は存在出来るの?」」
「当然。」
彼女は少し動きを止めた後、覚悟を決めた、とでも言うかのように胸に手を当てた。
「解った。私は・・・私は・・・」
彼女は少し俯き、その後叫ぶかのように顔を上げる。
「私はまだ此処に存在していたい!」
その声は、俺にもよく聞こえた。
透き通った、綺麗な声だった。
「・・・!私、本当に・・・!」
「ふふ、ね?俺の言う通りにして良かったでしょ?」
「有難う。えっと・・・私はリラ。黄泉月リラ。」
「颯司だよ。改めて・・・ようこそ、俺のチームへ。リラ、これから宜しくね。」