気付いた2人は何をした?
レッスン中に色々あったものの私服ライブを何とか成功させたそーしは、プリパラの噴水の前に居た。
最早待ち合わせでは定番である。
しかし、もうすぐ日没。
プリパラの閉館時間が迫っている事もあり、此処に居る人間はそーしだけになっていた。
「・・・まだ?」
そーしがそう呟いた瞬間、彼の背後から走ってくるような足音が聞こえた。
そーしが後ろを向くと走ってきていたのは、彼の・・・
一応チームメイトである、ぱにょ。
そーしとぱにょは待ち合わせをしていたのだ。
「・・・遅い。庶民の分際で俺を待たせるなんて、ほんっといい度胸してるね」
「そっちこそ、クソガキの分際で年上に対してそんな上から目線で接する事が出来るの、もう怒りとか呆れを通り越して尊敬するにゃ」
そーしとぱにょは仲が悪い。
だからいつも喧嘩ばかりしているのだ。
「全く、それで何の用にゃし?もうすぐ閉館時間だし、なるべく手短に終わらせてほしいにゃ」
「それに関しては問題ないよ。ミヤに頼んで俺達だけ時間伸ばしてもらってるから」
「・・・それ程深刻な話にゃし?」
「取り敢えず、こっち来て」
そーしはぱにょから少し離れて手招きすると、そのままプリパラTVの方へ歩いていった。
ぱにょも慌てて後を追う。
プリパラTVの前に着いても、そーしはまだ歩き続けた。
プリパラTVの奥の、森の方へ。
「そっちって、確かあのボーカルドール・・・名前忘れたにゃ・・・」
「プリパラ。」
「そうそう、プリパラの家の方じゃ・・・何か用があるにゃし?」
「うん・・・プリパラじゃない方にね。」
「・・・え」
ぱにょは一瞬驚いたような表情をした後、こう言った。
「まさか・・・そーしにも、聞こえてるにゃし?」
「へぇ、ぱにょには聞こえてるんだ。」
「・・・視えてる?私がどれだけ目を凝らしても見えなかったあの声の正体が、そーしには視えてるにゃしぃ?」
「寧ろ、俺がどれだけ耳を澄ませても声を聞く事の出来なかったあの少女の声が、お前には聞こえてるんでしょ?」
「・・・そっか。だから私を」
ぱにょがそう言った瞬間、そーしは歩みを止めた。
2人の前には、まあそれなりに大きな家があった。
(コンコン)
そーしはノックをするが、誰も出ない。
もう1度強めにノックをしても、出なかった。
「・・・寝てるみたいだね。なら好都合」
「ちょっ・・・まさか、押し入るつもりじゃ・・・」
そーしはドアノブを回す。
すると、家のドアはいとも容易く開いた。
「お邪魔しまーす」
「うえぇ、外だったら絶対不法侵入で捕まってるにゃ・・・」
「家に鍵が無いのが悪い。ミヤも誰も出なかったら勝手に入っていいって言ってたし」
そーしは構わず近くの階段で2階に上がっていく。
ぱにょはドアをこっそりと閉め、それに続いた。
・・・少し歩き、そーしはドアに‘Pripara's Room’と書かれたプレートのかけられた部屋を見つけた。
「此処に居るかな・・・?」
「1回ノックしてみたらいいと思うにゃ。」
「っつって、プリパラの方が出たら気まずいでしょ・・・」
そーしはそう言うと少し悩んだ後、開けた。
お構いなしに。
そのドアを。
「ちょっ・・・!」
「ほーら、やっぱり居た。」
部屋では、1人のボーカルドールが寝ていた。
少なくとも、ぱにょにはそういう風に見えていた。
しかし、そーしには視えた。
ベッドで気持ち良さそうに眠っている、ボーカルドールの少女。
そして、2人の方を見て目を見開いている、彼女にそっくりな・・・
体の透けた少女の姿が。
「・・・誰?」
彼女は見ている
「嘘!?ぱにょさんまた倒れたの!?」
こんにちは、私はイットリウム。
今アイドルウォッチを通して、私のチームメイト・・・
そーしの話を聞いています。
『うん。レッスン中に・・・実は、今度のライブでやるダンスに大きく腕を振る感じの振付があって。ポジションが近過ぎたんだろうね・・・腕がのりに当たって、そのまま過呼吸起こしてぶっ倒れた。』
「大丈夫なの?その・・・接触時間、とか・・・」
『本当にちょっとだけだったから、それは大丈夫だと思う。ただ・・・もしかしたら、検査で入院する事になるかもしれないって、ベリは言ってた。』
「そっか・・・えっと、どうなるか決まったらまた教えてくれない?入院するならするで、お見舞いとか行きたいし・・・」
『解った。じゃあね。』
そう言って、通話は切られた。
私のチームメイト、ぱにょさんは女性恐怖症。
普通に話したりする事は出来るんだけど、物理的な接触をすると体調が悪くなって倒れるんだ。
「えっと・・・お兄ちゃんに詳しく聞いた方がいいかな?でも何処に居るんだろう・・・」
「プリパラTVに居るよ。」
「うん、プリパラTVに居るよね・・・」
「・・・!」
「ってあれ?何で私そんな事解ったんだろう?まあいいや、プリパラTVに行ってみよう!」
「気付いた・・・?」
プリパラ
「Metal Singer・・・!新しい新生チームの登場だね、アリハ!」
「意味が重複していますよ、リラ。まあ、アイドルチームが増える事は私達にとっても喜ばしい事です。」
「司令も喜ぶかな?」
「えぇ、きっと喜ぶでしょうね。」
「王子様?そいつはリラじゃないよ?」
そんな会話をしているのは、プリパラとアリハという2人のアイドル。
プリパラというのは茶髪の少女の名前である。
彼女の言う司令・・・
ミヤが、「いずれプリパラの中心となってくれるように」という意味を込めてプリパラと名付け生み出したボーカルドールだ。
とはいえそのまま過ぎるので、ファンやアリハ達からリラと呼ばれている。
アリハは・・・
とある国の王子、らしい。
「最近2人でライブする人、増えてきたよね。私達も・・・2人で、やる?あの時みたいにさ。」
「あの時のように、ですか・・・」
「違う、あの時この人と踊ったのはあんたじゃない!」
2人は、過去に2人で0-week-oldを踊った事がある。
ある時バグか何かでプリパラが目の光を失い無感情になった・・・
プリパリのファルルで言うところの、‘おねむ’の状態になってしまい、彼女を目覚めさせる前にアリハが彼女と一緒に0-week-oldを踊ったのだ。
結果プリパラは無事に目覚める事が出来た。
「機会があれば。」
「やったー!忘れないでね、アリハ!」
「どうして?どうしてあんた達2人共気付かないの?」
プリパラは、スキップしながらプリパラTVを出た。
「私が・・・私が、リラなのに・・・!」